──ETERNAL STRIFEとして発表するミックスCDは今回の作品が3作目になるんですよね?


DJ HOLIDAY:そうなんです。2人の間では最初の段階から3部作で作ろうと話していて、1作目がWDsounds×CPF“5014 COMP MOST WANTED”プロジェクトの第一弾作品として2014年にリリースした『THIS TOWN』、2作目が翌2015年にリリースした『THE CITY YOU LIVE』、そして、今回の『TROUBLES ARE BACK IN TOWN.』と、東京の街をテーマに、アートワークも統一したものになっています。
 

──つまり、最初の作品から5年越しで進んでいたプロジェクトだったんですね。


DJ HOLIDAY:結果的にはそういうことになります。振り返ると、最初に『THIS TOWN』を作っている時、自分たちとしては再生してから1時間ちょっとで終わる映画のようなストーリー性を大事にしたくて、CDで出すことにこだわっていたんですけど、選曲があまりに楽しかったし、思い入れがありすぎて、収録時間を大幅に超えてしまって。「これならもう1枚作れるんじゃないか?」って話から3部作に発展したんです。
 

──しかも、当初は誰がやっているか分からない覆面のプロジェクトでしたよね。


DJ HOLIDAY:1枚目は自分の名前を伏せて、何の説明もなくETERNAL STRIFE名義で出して、2作目は自分の変名、BLONDIE THE ORANGE BOX CUTTERとGRIN GOOSEのユニットという体でした。
──BLONDIE THE ORANGE BOX CUTTERといえば、2015年にリリースした『Setagaya Tales』はDJ HOLIDAYとのスプリットミックスCDでした。だから余計に混乱したんですけど、聞いた話では『Setagaya Tales』は今里くんの手元にレコードがない状態で選曲したミックスだったとか。
GRIN GOOSE:当時、今里くんがSTARRBURSTにレコードを預けていて、何があるのかも把握していたんですよね。その記憶を頼りに頭の中でシュミレーションした選曲をSTARRBURSTに手紙で伝えたっていう。『Setagaya Tales』はそうやって作ったものだし、『THE CITY YOU LIVE』は今里くんから送られてきた選曲リストをもとに俺も選曲して、その2つを合わせて、曲順をさらに整えたんですよ。そうやって作ったミックスCDは世界初なんじゃないかって、当時、うちらの間で盛り上がりましたね。

 

──どのレコードに何の曲が入っているのか。その曲はどんな質感や展開で、何が歌われているのかがきっちり頭に入っていたと。


DJ HOLIDAY:自分の持ってるレコードは覚えているじゃないですか。だから、難しいことではなかったです。
 

──ちなみに、現場で共有している感覚、その密度から察するに、2人の付き合いはかなり長いんですよね?
GRIN GOOSE:初めて会ったのは、STRUGGLE FOR PRIDEがAVEXからアルバム(『YOU BARK WE BITE』)を出す前ですよね?


DJ HOLIDAY:全然前です。2004年だったと思うんですけど、知り合いの服屋の事務所に遊びに行った時、俺の前に関谷くん(GRIN GOOSE)が座ってて。話し出したら、すぐに意気投合したんですよ。2人とも同い年で共通する感覚があって、なおかつ、入れ墨もある程度年齢がいって、お金を持ってから入れる人が多いと思うんですけど、俺と関谷くんは10代半ばから入れてるから、その歴史が体のあちこちに残っていたり。
GRIN GOOSE:生まれ育ったエリアが違うだけで、都内で同じ様なところで遊んでいつつもそういうところで出会うことがなかっただけで、面白いなと思うことも、イヤだなと思うことも近くて、「~ですよね?」「そうっすね」って感じで、こげ茶色の紙飛行機を一緒に飛ばしたりして、ずっと前から友達かなと思うくらいググッっと仲良くなったんです。

 

──関谷さんは以前からDJをやられていたんですか?


GRIN GOOSE:レコードはずっと買っていたんですけど、DJはやってなくて。ただ、DJじゃなくても好きな曲を入れたカセットを人にあげたりするじゃないですか。ある時、そのカセットの残りをCDに焼いて、友達に配ってたら、それを聴いた今里くんから「DJやらないんですか?」って言われて。「でも、DJの定義は色々あるから面倒臭いんですよ」って答えたら、「いや、好きな曲をかけてくれれば」って言ってくれて、(DJ HOLIDAY主催でNAKATANI氏、本根誠氏、DJ YABBY氏が名を連ねるパーティ)『UPTOWN TOP RANKING』の前身となるパーティに誘ってくれて。そこで初めてDJをやらせてもらいました。
 

──関谷くんのDJを聴かせてもらっていて、てっきり、長年やられている方なんだと思っていました。


GRIN GOOSE:かつて、DJをやってみようと思って、ターンテーブル2台とミキサーを買ってみたものの、自分には向いてないなと思って、DJ目的ではないレコードを買って、好きに聴いてましたね。
DJ HOLIDAY:今、お年寄りのDJの人たちは自分たちの食い扶持がどんどん減っていってるから、敷居を高く、DJ論とか訳分からないこと言って、自分達の領域を守ろうとしているじゃないですか。俺はあれが大嫌いなんですよ。そんな、DJなんてやりたい人は誰でも好きにやったらいいのに、あれはダメ、これはダメとか、ホント下らないなって。自分が誰かにDJをお願いする時は、その人が聴いてる音楽を教えてもらうという感覚だったりするし、そういうスタンスは敷居を上げている人に対してのカウンターになり得るんじゃないかなって思っているんですけど。

 

──DJでもなんでもそうですけど、個人的には、敷居を高くしたり、セルフ・プロモーションがすぎる人って、コンプレックスの裏返しというか、不安なんでしょうね。知識や経験に差があっても、その人らしい解釈やかけ方、音楽に対する愛情の注ぎ方によって、最高な空間はいくらでも出来るし、名もなき最高のDJたちは世の中にいくらでもいますからね。


GRIN GOOSE:お客さんはブースでDJがドヤ顔しているところしか見てないと思うんですけど……
DJ HOLIDAY:俺とか関谷くんのところには著名なDJの方たちの色んな話が入ってきますからね(笑)。
GRIN GOOSE:そう思っているところに、今里くんから「好きな音楽をかければ……」って言ってもらって。その後、自分でセレクトした音源も出すようになったんですけど、聴く人は映画を一本観るくらいの時間を使うわけだから、起承転結があった方がいいよなって。そうやって色々考えるようになったんですけど、あとから文献を読んで知った話として、それって結局のところ、デヴィッド・マンキューソがやってたことなんですよね。

 

──そう。彼が育った孤児院で毎日行われていたホームパーティを、仲のいい友人を集めて再現したパーティ『THE LOFT』のスタイルがクラブカルチャーの基礎だと言われていますよね。友人にパーティを楽しんでもらうために、いいと思った音楽を共有するべく、好きな曲を繋がずに頭から最後まできっちり聴かせたり、パーティの流れを見つつ、起承転結を付けたり、音響や飲み物、フードに気を配ったり。今はそれが形骸化して、顧みられることは少ないですけど、もともとはパーティホストがお客さんのことをことを考えてやっていたことだったりする。


DJ HOLIDAY:俺、何年か前に「曲を繋がないとDJじゃない」ってことを言われたんですけど、現代の『THE LOFT』みたいなパーティだと言われているブロンクスの『JOY』ってパーティに遊びに行ったら、踊っている人は踊ってるし、喋ってる人は喋ってて、色んな音楽がかかるし、1曲終わると拍手が起こって次の曲がかかるスタイルで、そういう在り方でOKなんだと思ったんですよ。自分にとってはその時の音楽体験が大きかったかもしれないですね。
 

──ETERNAL STRIFEのDJやミックスを聴くと、個人的には当たり前のことを当たり前にやっている凄さを目の当たりにして、ハッっとさせられるんですよ。例えば、起承転結の付け方にしても1曲1曲の歌詞の内容を吟味したうえでかけていることがよく分かる。


DJ HOLIDAY:僕らは音楽を部品のようには聴いてないというか、1曲1曲を大切に聴きたいんですよね。
GRIN GOOSE:子供の頃に買った誰も知らないブレイクのイントロがドンって感じで入ってるミックステープは何回聴いても何も思わなかったし、大切に、曲の最初から最後まで聴きたいじゃないですか。
DJ HOLIDAY:自分は、二見(裕志)さんとか長谷川賢司さんとか、丁寧に音楽を扱うDJが好きなのかもしれないです。
GRIN GOOSE:歌詞を吟味することに関しては、その場に英語圏の人がいる時、鼻で笑われちゃうような感じにはなりたくないなって。僕は英語がペラペラなわけではないんですけど、曲にはタイトル、歌詞があるわけだし、何歌っているのか理解しようとするじゃないですか。

 

──海外のDJは歌詞の内容を踏まえたうえで曲をかけていて、その場のムードや気分に合わせた歌のメッセージをターンテーブル越しに投げかけている。お客さんも歌詞の内容が分かるわけで、当たり前の話ですよね。だって、DJじゃなくとも、例えば、結婚パーティで曲をかける時、別れの歌、浮気の歌を選んだりはしませんからね。


GRIN GOOSE:そう、それって、あまりに当たり前の話だと思うんです(笑)。自分の場合、歌詞を強く意識するようになったのは、メアリー・J.ブライジの『My Life』なんですよ。あのアルバムが出たのは僕らが20歳の時だったと思うんですけど、それ以前は馬鹿だったから、歌詞の理解はそこそこに、耳触りのいいものばかりを手に取っていたんですけど、あのアルバムで作品全編の歌詞を意識して聴いたことで、歌詞の重要性に気づかされたんです。今里くんはハードコアパンクを聴いてたから、僕よりもきちんと歌詞に接してきたと思うんですけどね。
DJ HOLIDAY:例えば、“regret”っていう英単語はDEATH SIDEの歌詞で知ったり(笑)、それはそうだと思います。

 

──ミックスCDにおける起承転結という話がありましたが、ETERNAL STRIFEのミックスCDは音はもちろんのこと、歌詞の流れを追っていくと、映画や小説のようなストーリー性が流れているところに大きな特徴があります。


GRIN GOOSE:僕はどちらかというと漫画派なんですけど、今里くんは小説をすごい読んでるし、2人とも映画好きだったりして。そういう流れは一番意識しているんじゃないかな。それについてお互い話したりはしないんですけど、意識しているところは一緒だと思うから。
DJ HOLIDAY:確かに重視してますね。

 

──関谷さんは、エドワード・バンカー原作の映画『ストレート・タイム』とか、廃盤になってる映画もディグってますしね。


DJ HOLIDAY:はははは。
GRIN GOOSE:でも、それはBUSHMINDと今里くんからの振りもあるから(笑)。ちなみに2人が今一番観たい映画は『YARDIE』だったりするんですけどね。

 

──その昔、荏開津広さんが翻訳を担当したヴィクター・ヘッドリーの小説を映画化した作品ですね。
 

DJ HOLIDAY:あれは無茶苦茶観たい。日本で公開して欲しいですね。
GRIN GOOSE:小説がかなり良かったですからね。
DJ HOLIDAY:もし日本で公開して、その記念パーティをやるなら、僕たちを呼んで欲しいです(笑)。

 

──はははは。今回のミックスも1曲目は某カントリーデュオの「Trouble's Back In Town」から始まるわけですが、この曲は、トラブルの種となる女の子が街に帰ってきたという曲で幕開けるのに対して、ミックスCDのタイトルは微妙に異なっていて、『TROUBLES ARE BACK IN TOWN.』なんですよね。


DJ HOLIDAY:このミックスCDは3年前の夏に録ったもので、その後、ちょっと曲を足したんですけど、ほぼそのままだったりして。トラブルの種について歌われている曲に対して、ミックスCDは「さあ、帰ってきたんで楽しませてもらいましょうか」っていう感じのものを作ったんですけど、その後、お蔵入りになりかけたところをATOSONEがサルベージしてくれたんです。
GRIN GOOSE:過去2作もそうだったんですけど、ETERNAL STRIFEは何かしらのきっかけやタイミングがないと作品を出さないっていう。DJ HOLIDAYもGRIN GOOSEもそれぞれミックスを出しているし、ETERNAL STRIFEは現場でやらせてもらっているということもあって、作品を出すとなると……って感じなんですよね。
DJ HOLIDAY:ATOSONEはETERNAL STRIFEとして名古屋に呼んでくれてたんですけど、過去3回は諸事情で行けなくて、一昨年、4回目にしてようやく実現したんですけど、そのタイミングでATOSONEから今回のミックスCDの話をいただいて。そこから少し時間は経ってしまったんですけど、こうしてようやく実現できました。

 

──3年前に録音された今回の音源は、表層的な新しさや型にハマったヴィンテージなスタイルを超えたところにある2人の現在進行形にして普遍的な音楽観、これまでも、これからも続いていく揺るぎない音楽の楽しみ方を浮き彫りにしているように思います。


DJ HOLIDAY:作ってから3年経って、改めて聴き直してみて、プリズン物のミックスCDの最高峰なんじゃないかと自画自賛しつつ(笑)、それぞれが選曲したレコードは一貫したものがあるなって、自分たちでも思いましたね。
GRIN GOOSE:それぞれが選曲したパートだけでも一貫したストーリー性があるし、その2つが合わさった大きな流れにも一貫したストーリー性があって、全部で3パターンの聴き方が出来るようになっているという。
DJ HOLIDAY:音楽観という意味では、自分たちがレコードを聴いたり、本を読んだり、映画を観たりする時、集中、没入するにあたっては時間や気持ちに余裕がないと出来ないと思うんです。でも、その一方で、物事を丁寧に扱う機会はどんどん失われつつある気がしていて。俺らのDJもBGMでいいというか、みんなでキャッキャはしゃいでる、その後ろでいい音楽がかかってたら最高だなって。こないだの宮田(信:BARRIO GOLD RECORDS)さんのパーティ(フィンランド発のミュータント・チカーノソウル・シンガー、BOBBY OROZAのリリースを記念し、カリフォルニアの現行チカーノソウル女性DJ、MONILOCAとSPINORITAを招いて行われた『EL CALLEJON DEL BARRIO VOL.4』)とか、海外ではそういう音楽の楽しみ方が一般的になっているじゃないですか。日曜の午後、友達の家やバーで持ち寄ったレコードをかけて、それだけでシーンが成立しているっていう。そういう在り方が理想なんですけどね。デカい音がガンガンかかってるなか、みんな大声で喋って、景気いい振りしてるより、そっちの方がよくないですか?
GRIN GOOSE:2人の間では普通のことをやってるだけなんですけどね。だから、普通じゃない人たちを見ると、まぁ、ねぇ(笑)。
DJ HOLIDAY:最近面白かったのは、ハードコアパンクもヒップホップもレゲエも大好きで、普段はそういうことを口にも出さないRIGIDのタカアキが最近作ったフライヤーに「お前らより全然音楽好きじゃ、ボケ」って書いていて(笑)。俺が大阪に通って遊ぶようになって、いいなと思ったのは、大阪の人にとって、自分の知識をひけらかすのはダサいっていうスタンスですね。みんな御託を並べるのが好きだったりしますけど、そういう人たちより知識や愛情を持っている人はいくらでもいますからね。
GRIN GOOSE:タカアキくんはヒップホップのパーティに鋲ジャン着てきて、こないだ今里くんのパーティにはオーセンティックなパンクスのスタイルで遊びに来てて(笑)、まだ20代前半なのにそういう遊びをよく分かってるなって。
DJ HOLIDAY:NAKATANIさんにしてもレコードのかけ方や歌詞の話を含めたレコードの話も多くを語らないんですよ。だけど、訊けば教えてくれる。クボタ(タケシ)くんも似たようなところがあって、それって、その人達が持つ気持ちの余裕なんですよね。そうじゃない人はこちらが訊かなくてもベラベラ喋る。ちょっと前にある有名なDJが現場で俺のミックスを丸々かけてたことがあって、NAKATANIさんの不死身亭一門でそんなみっともないことやったら速攻で破門になる話だし、そういうことしちゃう人は逆に余裕がないんでしょうね。

 

──人がかけてたレコードを真似てかけてもその人がその音楽に辿り着くまでの過程がショートカットされているわけだから、同じような説得力は持ち得ないんですけどね。


DJ HOLIDAY:DJというのはスタイル・ウォーズから始まったものだったりするわけで、そんなことやってもつまらないでしょって思うし、もっと自分に自信を持った方がいいんじゃないのって。
GRIN GOOSE:そういうことをやるような人たちは音楽を楽しむというより、流行りを追ったり、作ったりっていうことをやっている風なのかなって思うんですけど、僕らは好きなものをただただ掘り下げているだけ。そういうことをずっと続けていると世間とタイミングが合ってしまう瞬間があったりもするんだけど、ただそれだけの話であって、世の中で流行ろうが廃れようが関係なく、ずっと続けているやつが信用できるんじゃないかなって。

INTERVIEW AND TEXT BY YU ONODA

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